比曽原王子(ひそはらおうじ)は、近露道中から約2キロメートルほどの国道沿いの土手の草叢のなかにあり、緑泥片岩の碑のみが遺されている。社祠があったあたりは杉植林地になってから時間がたっており、痕跡は見出せない。道中からは茶屋坂を登って国道に一度合流し、楠山坂を登ってゆく。
比曽原王子の名は『愚記』や『熊野縁起』に見られるが、早い時期に退転したようである[16]。元文4年(1739年)の参詣記『熊野めぐり』には、近隣の住人に尋ねてもその由来を知る者がいなかった、と述べられている。
この近くには手枕松というマツの名木があったと伝えられ[17]、江戸時代の文人の紀行文の類では、こちらの方がむしろ関心を集めていたようである。
- 所在地 田辺市中辺路町野中字比曽原1143