猪鼻王子(いのはなおうじ)は、三越峠一帯を源流とする音無川(おとなしがわ)の河畔にある。本宮町萩から三越峠を結ぶ林道が拓かれ、参詣道の跡はとどめられておらず、王子址には林道から河原に下りて行かねばならない。現在ではわずかに紀州藩の碑が残るのみである。
『愚記』に「猪鼻」とあり、『中右記』『頼資卿記』には谷川を数度わたって猪鼻王子に着いたとある[5]が、その後の熊野詣の衰微に伴って廃絶した。『郷導記』にも、谷川にかかる板橋をわたりながら進んだとあり、ほとんど道筋に変化が無かったことが分かる。次の発心門王子までは、猪鼻王子からごく近いところから山道を登って行った様が伝えられているが、現在ではその跡をたどることはできない。
- 所在地 田辺市本宮町三越字猪鼻1811