大門王子(だいもんおうじ)は、高原集落から十丈峠へ向かう山道の右手にある。『愚記』や『中右記』に言及はなく、『道中記』(享保7年〈1722年〉)に社殿なしとしてこの王子の名が登場するのが史料上の初出であることから、中世熊野詣以後の時代に建てられた王子と見られている[7]。大門の名の由来は、この付近に熊野本宮の大鳥居があったことによるという。
以前は見事な松の大木があったが、マツクイムシの食害で枯死し、伐られた。その後、朱塗りの社殿が建てられ[8]、町石卒塔婆と緑泥片岩碑はその背後に隠れてしまっている。定家・宗忠の参詣記、さらに古くは増基の『いほぬし』も、この付近に水呑仮宿所ないし山中宿なる宿所にふれているが、大門王子付近にあったものと見られている[9]。
- 所在地 田辺市中辺路町高原707-2