小広王子

小広王子(こびろおうじ)は、中ノ河王子から続く小さな峠にある。『中右記』10月25日条に、「仲野川王子」に奉幣の後、「小平緒(こびらお)」「大平緒(おおびらお)」を経て岩神峠に向かったとし、『愚記』も「中ノ河」の次は「イハ神」と述べている。いずれも王子社の存在は述べられておらず、成立はその後と見られる[20]

『道中記』(享保7年〈1722年〉)に「小広尾」なる王子の名が登場するのが史料上の初出だが、既に社は失われていたという。紀州藩が緑泥片岩碑を建てたが、1909年(明治42年)に近露の金比羅神社(近野神社)に合祀廃絶された。

1899年(明治32年)および1930年(昭和5年)と2度にわたる県道(現・国道311号)の道路改修で小広峠の道筋が大きく掘り下げられたことにより、跡地は消滅し[20][21]、碑も現在地に移された[22]。碑は上部が欠損しており、下部の「王子」の文字がわずかに読み取れるのみの状態である[21]

  • 所在地 田辺市中辺路町野中字小広1