白馬岳のふもと・小谷村に豪壮な長者がいた。この家には、たまきというたいそう美しい娘がいた。
たまきが年頃になると、多数の男がたまきを嫁にと尋ねるが、けちで有名だった長者は首を縦に振らない。
時には、人間に化けた動物がたまきの美しさをのぞき込む事もあった。
春の時期にたまきは、一人の若者と人目を偲ぶようになっており、いつしか深い恋に落ちるようになっていました。
若者は、辺りに夕もやが広がると何処からともなく現れるのだが、
不思議な事に、自分の素性を言う事はなかった。
そして二人の仲が長者の耳に入り、別れないと若者を成敗すると、たまきは激しく怒られる。
「わたしはもうあなたとは会えなくなるのです。どうかわかってください。」
とたまきは涙ながらに若者に涙ながらに訴えますが、若者は納得せず急に化け物に姿を変える。
逃げるたまきを追い詰めたその時、化け物は猟銃で撃たれる。
猟師・げんじが間一髪で救ったのだった。長者は娘を助けたげんじを、たまきと結婚させる。
しかし祝いの席に化け物が乱入し、黒雲に乗って白馬岳山頂めがけ、たまきを連れ去って行った。
村人は総出で、夜通し山の中を探したが、たまきはついに見つからなかった。
夜が明けると、山のさくら草が白から赤に染まっていた。村人たちの噂では、飛び散ったたまきの血で赤く染まったのだと言われています。
以来、白馬岳のさくら草は真っ赤に咲くと言われている。