蒼氷[講談社『蒼氷』]昭和三十二年(1958)八月発行
【人物】
- 守屋紫郎(富士山観測所)
- 小宮正作(富士山観測所)
- 窪沢(富士山観測所)
- 塩町(富士山観測所)
- 椿理子
- 椿俊介(理子の弟)
- 椿武男(理子の伯父 シェンクのピッケルの元持ち主)
- 椿泰三(理子の父)
- 桐野信也(理子の知人)
- 杉中(理子の知人)
【山】
- 富士山山頂
- 愛鷹山塊
【ルート】
シェンク(SCHENK)
初代(the 1st.);Christian Schenk(1861~1926)
2代(the 2nd.);Fritz Schenk(1894~1973)
シェンクはアイガーやユングフラウで有名なグリンデルワルト(Grindelwald)のピッケル鍛冶であった。初代の名前はクリスチャン・シェンク(Christian Schenk)。端正な曲線と優美で鋭い作風で知られ、山道具の一つであるピッケルを芸術品と言える位までにした鍛冶職人であった。 初代シェンクの時代のピッケルはシャフトをヘッドに貫通させて上から同種金属の蓋を被せるいわゆる「頭抜(ずぬ)き」構造が一般的だった。これはピッケルが斧から発達してきたことを物語っているが、どうしても頭抜きでなければならない理由が乏しかったので時代と共に次第に頭抜き構造はすたれていった。
2代目フリッツ(Fritz)は銘に「F.シェンクと刻んだ」らしい。ピッケル作りに興味のうすかったフリッツはほとんどピッケル作りをしていなかったようだ。初代および2代目共に製作本数は少なく、したがって現存数は極めて少ないと考えられる。